「1人で抱え込んでしまう」「男なのに、男を好きになってしまった」人に刺さる作品。ヨネダコウ著「NightS リプライ」

ゲイが選ぶBL本

「がんばっていることを認めてほしい」

そんな感情は甘えだと思っていた。仕事なんだから、がんばるのは当たり前。認めてほしいなんて甘いし、そんなことを求めるのはおかしいとまで考えるようになっていた。

そんなときに読んだヨネダコウさんの「NightS」の中の物語の1つである「リプライ」

一冊の中に3つの物語が入っているので、「リプライ」のボリュームは140頁ほどなんですが、すごく濃厚な物語でした。心に残って、10回は読み返している作品です。

心に残る作品って

「自分が抱えている悩みや、考えていること、感じていることを代弁してくれる」

ものが多い気がするんです。

この作品は以下のことに当てはまる人ほど、刺さるものがあります。

・仕事を頑張っているけれど、まわりがそれを認めてくれず、自分も仕事だからと諦めている。1人で抱え込むタイプ

・男なのに男を好きになってしまったときの辛さ、葛藤を知っている

 

あらすじ

生真面目な腕のいい自動車整備士のリーダーである関は、1人で抱え込むタイプだった。自分さえ頑張ればいい、そう思いながら1人、夜遅くまで働いていた。

そんな夜、営業のトップである高見の顧客を助けたことをきっかけに、2人は食事に行くことに。

笑わない、何を考えているかわからないと思っていた高見は、努力家で、人として尊敬できる人物だった。そして何よりも、自分の頑張りを認めてくれる人だった。

そんな高見に惹かれていく関だったが、その感情に戸惑いを感じてもいた。

「参ったな。俺はこの感覚を知ってる」

人が人を好きになるって、こういうことだよなあと改めて教えてくれる作品です。

何が上手いって、感情の動きがすごく丁寧なんです。こういう性格の人が、こういう場面に遭遇したら、こう感じるだろうなっていうのが、事細かく描かれている。

圧倒的なリアルさ。それがヨネダコウさんの作品の特徴だと思います。

自分が頑張ればいい。それが当たり前だと思ってた

僕は整備士の関さんに感情移入しまくりだったんですね。その理由の1つに

「自分1人が頑張ればいい」

と考えているところがそっくりだと感じたから。僕の場合、理由はいろいろあるんですが

誰かにお願いする労力 > 1人でやる大変さ

なんですよね。

嫌がられるかもしれないし、言い方にも気をつけないといけない。内向的な人ほど、頭の中でぐるぐると考えてしまって疲れるから、1人でやる方が楽だと思ってしまうのかもしれない。

でもね。これを続けているとふと思うんです。

「なんのために、こんなに1人で頑張っているんだろう」

誰も認めてくれない。けれど仕事だからやらなくちゃいけない。ただ、そのままだとつらいから、認めてほしいという感情に蓋をする。

そんなのは、甘えだ。自分には必要のないものなんだと思いこむ。

そうやって折り合いをつけてきた。

 

そんなときに自分の頑張りを認めてくれる人がいたら、心動くし、泣きたくもなりますよ。

 

トップの営業である高見さんは、人の承認欲求をくすぐるのがホントに上手い。関さんの荒れた手を見て

「かっこいいっていうのは、そういうことだと思います」

と言えるのは、もう人たらし中の人たらしですね。よく見ないと気付かないですが、関さん、少し涙ぐんでます。そして自分が実は参っていたことに気付くんですね。

関さん、完全に落ちてます。

男が男を好きになる葛藤

この作品は設定上、ノンケ×ノンケなんですよね。関さんも初めて男性である高見さんを好きになったし、高見さんはそんなことを考えたことすらなかった。

なので、これはあんまり現実的な設定じゃない。けれど、感情移入できたのは「ゲイがノンケに恋するときも同じように感じるから」なんだろうな、と。

本編でも合コンで高見さんと女の子が話をしているのを見て、関さんが嫌だと思うシーンがあるんですけど、これがまた気持ちがすごくわかるんですよ。

自分だけを見ていてほしい。他の人に向ける笑顔を、自分に向けてほしい。

ゲイの片思いの場合、その範囲が2倍になるから、なおつらい。性別問わず、好きな人と仲良くしている人はもれなく嫉妬してしまう。

まあ、恋のあるあるだと思うんですが、自分だけの悩みだと思っていたので、妙に感情移入してしまったシーンです。

 

とまあ、こんな感じでどっぷり関さんに感情移入してしまったおかげで、後半高見さんに怒りを感じるところもありました。

詳しくはネタバレになるので言えないんですが、高見さんが考え足らずで、関さんを傷つけてしまうある事件が起こるんです。その結果ひとり車の中、帽子で顔を隠しながら涙をこらえる関さんを見て

「高見…いっぺん死んでこい」

とリアルに思ってしまいました。高見さん、びみょーに人の心が読めないんですよね…

その辺りも含めて、非常に心を持ってかれた作品になりました。興味のある方はぜひ読んでみて下さいね。

 

 

 

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